L寄りBの本棚。

バイセクシャルだったけどだんだん男性に興味がなくなったレズビアン(L寄りB)がLGBTを題材にした小説や漫画について一丁前に語るブログ。

【評伝】『ゆめはるか吉屋信子』田辺聖子~1日目

昨日の予告通り、これからしばらく田辺聖子による吉屋信子の評伝、『ゆめはるか吉屋信子』を日数をかけて読んでいこうと思う。

 

こうなるともはや百合小説とか百合漫画とか関係なくなってくるわけだが、おせいさんが先日なくなったこともあり、何となくこの本を再読しろと言われているような気がしたのである。

まあ、吉屋信子の生涯を見ていくことで、何か作品の謎がとけるかもしれないし(とけないかもしれないが)。

 

さて、『ゆめはるか吉屋信子』の章立ては以下の通りになっている(番号は便宜上私がつけた)。

【上巻】

1 鬱金

2 紫の矢絣・海老茶の袴

3 東京漂白

4 潮みちて

5 パリの夢

【下巻】

6 嵐の薔薇

7 戦塵

8 冬木立

9 春晝

10 面影つかのま

11 年の湯の湯気に消えゆく月日かな

 

ちなみに1章ずつが結構長く、夜ちょこちょこと本を読むだけの私にはきつい。なので、ブログは1章ずつ書く予定だが、途中サボったりして長くかかるかもしれない。

 

で、今日は1の鬱金桜である。おせいさんは吉屋信子の評伝を始めるにあたって、いきなりビジュアル問題から斬りこんでいる。つまり、「吉屋信子は醜女だという人がある。」という一文から始まっている。試しにスマホ吉屋信子の画像を検索してみたが…「普通じゃないかなあ?」という印象である。確かに客観的に美人とはいえないけれど、ブサイクではない。

しかし、吉屋信子は生涯、容姿についてあれこれ言われることが多かったというのだ。おせいさんは嫉妬だとか、女だからとか色々書いておって、それもあるだろうけど、まあ容姿をあれこれ言うのは男だろうなあと思う。今なら、女性は言わないだろう。別に芸能人じゃないし、作家だし。

容姿の話から入って掴みはOKのところに、おせいさんは吉屋信子の両親のルーツをサラッとワンクッション入れて、今度はヘビーな足尾鉱毒事件をぶち込むのである。すごいな、おい。

なぜ吉屋信子足尾鉱毒事件が関係あるのかというと、父親の吉屋雄一が、この足尾鉱毒事件に役人として絡んでいるからである。もちろん、吉屋信子自身とは直接関係ない話ではあるが、谷中村の抵抗やその後の悲惨な状況について、おせいさんはこれでもか、これでもかと書く。非常に興味深く、足尾鉱毒事件の概要についてよく分かるのだが…あれ、これ、何の本だっけ?

足尾鉱毒事件の話の後は、信子と文学との出会い、そして栃木高女への入学についてまたサラッと書いてある。鬱金桜は高等女学校入学のときに咲いていた花。

 

うーん、おせいさん、足尾鉱毒事件のおさらいができたよ。ありがとう。