L寄りBの本棚。

バイセクシャルだったけどだんだん男性に興味がなくなったレズビアン(L寄りB)がLGBTを題材にした小説や漫画について一丁前に語るブログ。

【評伝】『ゆめはるか吉屋信子』田辺聖子~2日目

17年前の今日はナンシー関が亡くなった日であった…私は彼女の生前からそこそこ彼女の本を読んでいたのだけれど、すっかり忘れていた。『信仰の現場』はかなりオススメで、誰がファンでもないのにわざわざ矢沢永吉ウィーン少年合唱団のコンサートへ行ってルポを書くものか。わざわざ大陸横断ウルトラクイズに応募・出場したというのも面白い。

 

というわけで、本当はおせいさんどころではない気分なのだが、私がナンシー関の話を始めると長い上に、そもそも全く百合とは無関係になってしまうのでやめておく。

 

今日は、2番目の章、紫の矢絣・海老茶の袴を読んだ。

この章では、吉屋信子の4年間の栃木高女時代が記されている。ところどころ、信子の生活を語る上で『花物語』の文章が引用されていて、『花物語』を読んだばかりの私としてはデジャブ感があるが…あの小説群(のうちの学園もの)は実際の信子の経験を元にしているということか。まあ、そうじゃないとなかなか書けないだろうし、逆に個人の体験と完全に切り離して書くのも困難だろう。

花物語』以外にも、信子の個人雑誌『黒薔薇』掲載の小説からの引用もある。一つ得た知識としては、信子は自分をモデルにした登場人物については、「章子」という名前を与えているということである。そういえば『屋根裏の二処女』の主人公も章子だ(まだ読んだことないけど)。なるほど、割と私小説的なものも残しているのだなあ。

ちなみにこの章、実際に信子が愛読した作家・作品の名前も挙がっている。巖谷小波小杉天外、木下尚江、泉鏡花徳富蘆花樋口一葉谷崎潤一郎…かなり幅が広そうである。どうやって調べたのかな、おせいさん。まあ、吉屋信子本人がどこかに書いてあったのだろうけど。

 

しかし、とりあえずこの章を読めば、吉屋信子大先生による少女小説の原点はよく分かる。ひとつには、当時の良妻賢母教育への反発(新渡戸稲造が栃木高女に来て講演をした際に、良妻賢母教育より前に人としての教育を、というようなことを新渡戸が言ったので、信子はいたく感激したという)。もうひとつは、女性性への渇望(なんせ吉屋家は上に兄が4人いるのである。自宅は相当ガサツな空間だったであろう)。前者は一言で言えばフェミニズムだし、後者は…。やはり百合とフェミニズムは相性が良い、というか姉妹のようなものなのだ。百合好きもフェミニズムの先生方も認めたがらないだろうけど。