L寄りBの本棚。

バイセクシャルだったけどだんだん男性に興味がなくなったレズビアン(L寄りB)がLGBTを題材にした小説や漫画について一丁前に語るブログ。

【漫】『ラヴァーズ・キス』吉田秋生

何度も繰り返し読める本があるというのは非常に幸せなことなのかもしれない。この『ラヴァーズ・キス』も私が繰り返して読んでいるうちの1冊で、毎回泣けるポイントが違うのである。

前回は「オオサカ」にえらく感情移入してしまって泣いた(仕事の待ち時間に読んでえらいことになった。夜や休みの日に落ち着いて読むべきである)が、今朝は美樹と依里子の、それぞれの全く報われない恋心に泣けてきたのである。

 

この題名で舞台は鎌倉や湘南の海、どんなリア充ストーリーが展開されるのかと思いきや、男女が3人ずつ、計6人出てきてこの不毛っぷり。唯一、里伽子と朋章は交際することになるが、朋章は鎌倉から遠く離れた小笠原諸島に行ってしまう(もちろん深い理由があってのことだが)。本当に報われない。

里伽子が今後どうするのか考えてみたけれど、多分小笠原に移住するということはないだろうし、逆に朋章が鎌倉に戻ってくるということもないと思われる。徐々に交流が途絶え、10代の頃の美しい思い出となって終わり。だからこそ、他の登場人物の恋の不毛っぷりと釣り合いが取れるのかもしれない。やっぱり1組だけハッピーエンドでは変だもの。

 

実写で映画化もされた(私の好きな市川実日子が美樹役で出ている!しかし、観たことはない)20年以上前の名作について、今更私が言及するのもどうかとは思うけれど、良いものは良い、みんなによをということで取り上げてみた。泣ける、なんて陳腐な言葉は使いたくないが、泣きたい人、しんみりしたい人はどうぞ。

 

あ、別に本作品では、LGBTが特にクローズアップされているわけではない。登場人物の恋愛感情のベクトルが同性になっているだけ、と思ってもらえたら。積極的な「オオサカ」に勇気づけられるLGBT当事者もいるとは思う。色んな意味でぜひ。

 


本・書籍ランキング