L寄りBの本棚。

バイセクシャルだったけどだんだん男性に興味がなくなったレズビアン(L寄りB)がLGBTを題材にした小説や漫画について一丁前に語るブログ。

【L小】『ののはな通信』三浦しをん

今朝はあんまりおすすめしない作品を。

 

2人の女性の、10代〜20代前半の往復書簡と40代前半のメールのやり取りで成り立っている小説なのだが、この構成自体は面白い。ていうか、アイデア勝ちな気がする。

 

だけど、はっきり言わせてもらうと、どっちの女性にも感情移入できないし、どっちも好きになれないし、どっちのキャラクターも中途半端なのだ。

 

「はな」が天真爛漫だというなら、遠慮なくガンガン「のの」を振り回して欲しいし、「のの」が賢いキャラだというならもっと頭のいい振る舞いをして欲しい。だが、どっちも中途半端で、見ていてイライラするのである。

特に「のの」がダメ。自分が男もいけるんじゃないか、また好きになれないかどうか試すために男と寝てみる、というのは非常によく分かる(バイセクシャル当事者として)。が、だからといって手っ取り早く教師である与田とホテルに行くというのはいかがなものか。そんな身近でやってしまうと「はな」にバレる可能性があるわけだから、賢い人はやらないと思うんだが。

あと、好きな人がいるのに、その好きな人と付き合えないだろうからといって、男とホテルに行くというのも私にはよく分からない。何年も片思いしているけど…というなら分かる。だけど、今近くにいる人が好きで好きでしょうがない状態でそれをやるってのは全く理解できない。

もっと「のの」について「こいつ嫌だな」と思うのは、ちょくちょく手紙の中に「いいこと」を挿入してくるところである。なんか格言というかお説教みたいなことを手紙やメールに入れるんだけど、そんな奴いるか? まあいるかもしれないが、ウザ過ぎてあまり仲良くしたくない。

 

まあ、2人の手紙やメールに出てくる「いいこと」は目が滑るのでほとんどスルーしてやったのだが、そうこうして読み進めているうちに、「はな」がいる国が内戦になり、「のの」は3.11に遭遇する。「はな」と連絡が途絶えて終わり、というラストもモヤモヤして「作者、何がしたかったんだ!」と叫びたくなる。

 

言っておくが、私は三浦しをんのアンチではない。というか、三浦作品は初めて読んだ(私はそこまでの読書家ではない)。が、この作品のせいで当分三浦しをんの本は手に取らないだろうと思う。せっかく、2人の女性のやり取り(少女期と中年期)という構成なのに、それを活かすこともあまりできていない。

 

実は私は、この、少女期と中年期のコントラストを期待して本作品を読んだのであった。もし自分がその構成でストーリーを考えるなら、絶対にそうするからである。しかし、その期待は裏切られ、しかもお話はしりきれトンボで投げ出されてしまった。ねぇ、ほんとに何がしたかったの?

 


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