L寄りBの本棚。

バイセクシャルだったけどだんだん男性に興味がなくなったレズビアン(L寄りB)がLGBTを題材にした小説や漫画について一丁前に語るブログ。

【L漫】『私の世界を構成する塵のような何か。』天野しゅにんた

一発目に取り上げる作品は漫画である。

 

女子大生7人のぐちゃぐちゃした人間関係を描いた作品、と一言で説明してしまうと何にも面白くない、むしろ面倒くさい感じがするが、なかなかどうして3巻一気に読める。

7人も出てくるのか、海外の小説みたいで頭が痛い、と思う人は、とりあえずメインストーリー(留希と、留希が片思いしている祥との関係性の変化)について注目したら良い。この部分だけでも充分楽しめるはずである。

 

しかし、この作品は残り5人のキャラも立っていて、無視するのは非常にもったいない。7人が何をモチーフに描かれているかは、3巻目の巻末で説明されていて…そのせいかキャラクター設定には成功している。もっとも、うち3人(笙子、明日菜、芽流)は精神科医に診せると何らかの病名がつけられそうであるが。

メインストーリーに対する、豊富なサイドストーリーのうち、特に私は芽流の成長に着目したい。彼女は自分の欲望(食欲と性欲)にのみしたがって生きる、まあただのおバカな女の子だったわけだが、真麻と出会っていつの間にか人のために働き、また人の幸せを願えるようになる。さっき病名がつくと言った芽流ではあるが、作中一番成長したのも芽流ではないかと思う。

 

逆に「おそらく一生変わらないだろうな」と思うのがみれあで、永遠に22歳くらいの精神年齢なのだろう。途中、彼女は明日菜が通っていた塾(みれあの父親が経営する)のチューターとして出てくるが、ずっとそういう立ち位置で生きるだろう。学生から見ると大人(他の6人より2歳上である)だが、ずっとそのままでいつか通り過ぎられ、追い越される存在。

 

変わる者と変わらない者。その差はどこにあるのだろう?

 


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