L寄りBの本棚。

バイセクシャルだったけどだんだん男性に興味がなくなったレズビアン(L寄りB)がLGBTを題材にした小説や漫画について一丁前に語るブログ。

【古典百合】『花物語』吉屋信子~5日目

さて、今夜は…

5 黄薔薇

6 合歓の花

7 日向葵

8 龍胆の花

9 沈丁花

10 ヒヤシンス

以上、5つを読んだところで頭が回らなくなり終了。ちなみに、10のヒヤシンスは学生時代に何か別の本で読んだことがあり、結構印象に残っている作品。あらすじは職場の「お姉様」が、昼休みに会社のヤローどもがこっちの(女性ばかりの?)部屋に遊びに来るのが邪魔(つーか権利侵害)だっていうので、他の同僚女性みんなの賛同を得て、上司にヤローどもの仕事以外の入室を禁止するよう申し入れをしたら「お姉様」はクビになってしまった、賛同したはずの女性従業員たち(主人公含む)も「お姉様」を裏切って賛同したことを否定した、というものである。

会社のオジサマが「お姉様」を評してブルーストッキングというのが「わあ、日本史だわ!」って感じで…日本史(近代史)の苦手な方々のために解説すると、ブルーストッキングというのは日本語訳だと青鞜ですな。青鞜…分かるでしょ。平塚らいてう伊藤野枝、神近市子…日本のフェミニズムの幕開けだ!

フェミニズムと百合との親和性はかなりあってだな、アメリカだとレズビアンフェミニズムなんてものまである。まあ、急進的なフェミニズムの中の一派だが、異性愛者なのにフェミニズムのためにレズビアンを実践(?)するらしい。フェミニズム思想を突き詰めると行き着く先はLらしい。Lと百合は正確には別のものだけど、誤差の範囲だから見逃してくれ。

ってなことで、早い段階(1920年前後)でこの、フェミニズムと百合との親和性に目をつけた吉屋信子大先生にはかなり先見の明があると言ってよい。

…と思ったけど、『青鞜』のメンツは先にフェミニズムとLを実践していたみたいでありました。面白い論文を見つけたから、読んでみてください。

 

*「青鞜」同人をめぐるセクシュアリティー言説

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/lcs/kiyou/pdf_28-2/RitsIILCS_28.2pp41-60WU.pdf

 

だんだん「日本におけるフェミニズムレズビアン」みたいなでかい話になってきたのでそろそろやめにしたいが、今の時代では「フェミニスト萌え」は書けないだろうな。女性の地位もある程度向上したし、当のフェミニストたちが割とLGBT問題から逃げているんだもの。

 

さて、その他の作品だが、5の黄薔薇は先生×生徒の悲しい百合、6の合歓の木は片思いしていた人が死後に墓参りしてくれる話、7の日向葵は片想いしていた同級生が家庭の事情で遠方に引越しする話、8の龍胆の花は陰キャがはっちゃけて悲しい片想いを交換日記的なものにぶちまける話、9の沈丁花は姉ちゃんに日記を読まれて片想いがバレていたことが姉ちゃんの死後に発覚する話…とものすごく乱暴なまとめ方をしたけど、あんまり間違いではない。

他の作品はいつもの吉屋節であるが、やっぱりヒヤシンスだけは「フェミニスト萌え」という異色っぷりが目立つ。ヒヤシンスのためだけに『花物語』の下巻、買って損は無い。