【古典百合】『花物語』吉屋信子~7日目
田辺聖子さんがお亡くなりになった。正直なところ、田辺聖子の小説は未読であり、私にとっては『ゆめはるか吉屋信子』という評伝の著者であった…次はこの本かね。再読するか、タイミング的に…また長い本だ、トホホ。
で、花物語の下巻だが、今日読んだのは…
16 玫瑰の花
17 睡蓮
18 心の花
19 曼珠沙華
この4作品である(番号は例によって私が便宜上ふったもの)。
16の玫瑰の花は舞台が北海道。好きな人が家族と船でどこかに密航してしまったという話。
17の睡蓮は二人の少女絵描きの話で、片方が賞に入選して、もう片方が落選したもんだから嫉妬してしまって大変なことになる話であった…ちょっと胸糞悪い。
18の心の花は文語体で読みづらいけれど、要は家族に疎まれていた少女が修道女になって救われたという話であった。こちらは本当に救いのある結末でホッとする。
最後の曼珠沙華は、曼珠沙華(彼岸花)の毒で死んじゃった話。いくら有毒だからといって、曼珠沙華の咲いている中で寝てるだけで死ぬのかどうか謎ではあるが。
ちょっと今日読んだ話はパンチが足りないな。
で、上下巻を通じて、「これはいい!」と思ったのは、
上巻→21 白百合、30 燃ゆる花
下巻→10 ヒヤシンス、14 桐の花
くらいかな。上巻の9の忘れな草と10のあやめも良い。分厚い百合カタログではあるが、美文に我慢しつつ読めば、何か得ることがあるかもしれない。得ることがなくても私は責任はとらないが。
なお、一つ吉屋信子大先生の作品で分かったことだが、必ずしも主人公やメインの登場人物が美形であるとは限らないのである。心の花なんかは、まさしく家族に疎まれるレベルの醜女(だってさ、あまり綺麗じゃなくても家族には可愛いって言われるよ、普通)が主人公である。まあ、この話は百合作品かと言われたら百合ではないけど。他にも客観的には美形じゃないだろうなあという登場人物が時々現れて、ときには恋におちる。
漫画だと、どうしても恋愛ドラマを繰り広げるのは、美男美女になってしまって、「平凡な見た目」なんて注釈がついていても絵柄は可愛かったりする。
が、小説には醜女でも恋愛ドラマの主人公となれるだけの包容力がある。そして、吉屋信子大先生はそのことを生かして、不美人にもスポットライトを当てる。この点は素晴らしいと思う。現実世界において、恋愛しているのは美女ばかりではないのだから。