L寄りBの本棚。

バイセクシャルだったけどだんだん男性に興味がなくなったレズビアン(L寄りB)がLGBTを題材にした小説や漫画について一丁前に語るブログ。

【古典百合】『花物語』吉屋信子~2日目

今日読んだのは以下15話である。ちょっと頑張った(番号は私が便宜上つけたもの)。

 

11 紅薔薇白薔薇

12 山梔の花

13 コスモス

14 白菊

15 蘭

16 紅梅白梅

17 フリージア

18 緋桃の花

19 紅椿

20 雛芥子

21 白百合

22 桔梗

23 白芙蓉

24 福寿草

25 三色菫

 

全部が全部百合話ではなくて、25の三色菫などはおじいちゃん先生が出てきた上にちょっとミステリーっぽくなっている(割と面白い)。17のフリージアはお母さんが亡くなる話だし、16の紅梅白梅は妹と別れる話。11の紅薔薇白薔薇も幼女が仲良しな話だから、あんまり百合ではないな…まあ、あんまり美文で百合の短編ばかり読むと胸焼けするのも事実なので、まあ調整のために入っていると思えばよいだろう(多分吉屋信子大先生はそんなつもりではないだろうけど)。

 

21の白百合は、タイトル通り百合と見ていい。ネタバレになるが途中まであらすじを書くと、以下の通り。新しい音楽教師の「葉山先生」は学校中の人気者。主人公も葉山先生のことが大好きで、先生の名前を日記にいくつも書いてみたり(乙女だなあ)、寄宿舎から外出する際には遠回りして葉山先生の下宿の周りを歩いたり(ちょっとストーカーっぽいぞ)せずにはいられない。だけど、他の生徒みたいに葉山先生を呼んだり近寄ったりはできない…そんな主人公であった。

あるとき、町の映画館(「活動写真館」ですって)にビクトル・ユゴーレ・ミゼラブルがやってきた。学内でも大流行したが、寄宿舎生活をしている主人公は見に行けそうにない。しかしある日、1学年上のS子に、「葉山先生の家に行くとウソをついて映画館に行っちゃおう」と誘われて、実際に映画館へ行った。でも帰りが遅くなったせいで、舎監に「ほんまに葉山先生のところにこんな遅くまでおったんか?」と呼び止められる。舎監が小使を通じて手紙で葉山先生に問い合わせると…舎監は穏やかな顔で、「今度からは気をつけや!」と。葉山先生は「その子らほんまにうちのところにおったんやで」とウソの回答をしてくれたのだった。

 

なんだか途中からカギカッコ内が関西弁になっているが単に私が要約しただけなので気にしないこと。結局、主人公とS子は葉山先生の気の利いたウソのせいでお咎めを受けずに済んだのであった。ここまでだと「そら、こんないい先生、人気者になるわなー」で終わる話である。が、ここからが音楽教師葉山のターンである。

その翌々日の音楽の時間が終わって、主人公とS子(あれ? 学年が違うのでは??)は教師を出た葉山先生を追いかけてウソ回答の礼を述べる。葉山先生の返事は、「私の返事で若いモンの経歴に傷がつかんかったらええんや」。問題はその後である。ここはそのまま原文で書こう。

「しかし、この事を、私のこの心を永く忘れないで、どうぞ(純潔)を、常に変わらぬ魂の純潔、行為の純潔を私に誓って守って下さい。これが私に対するあなた方お二人の何にも優る報恩ですの、ね、忘れないで、純潔! 私の大好きなあの白百合の花言葉をおたがいに守りましょう、生涯を通じて私達は!」

 

すごいよ、映画館に行ったのを黙っててもらった恩返しが純潔なんだもの。観念的なものかと思ったら、わざわざ「行為の純潔」って言ってるし、すごい音楽教師でんな。しかも、最後に「生涯を通じて」「私達は」ときた。葉山先生、強引に純潔クラブ結成しちゃった!

まあ、葉山先生はその後すぐに実家に戻ってお亡くなりになったので、おそらく生涯純潔を守るという目標は達成したのだろうが、残された生徒2人はこの後どうしたんでしょうね。特に主人公、なんぼ好きな人との約束だからって…いや、うちなら狂気じみたこと言われたら百年の恋も覚めそうやわ。