【古典百合】『花物語』吉屋信子~1日目
だいたい百合小説の歴史を語る際に一番最初に出てくるのがこの『花物語』である。が、存在は知っていても読んだことのある人は多くないんじゃないだろうか(結構いるならごめんなさい)。かくいう私も、とりあえず1回買ってざっくり読んだ記憶はあるんだけど、全く頭の中に内容が入っていない。
それで、これから何日かに分けてこの古典中の古典である『花物語』を読んで、内容をレビューしてやる予定である。予定だから予定倒れになるかもしれないが、続いている限りはお付き合いください。
さて、私の手元にある『花物語』は、河出文庫版である。上・下に分かれているが、上巻のラインナップは以下の通り(番号は私が便宜上つけた)。
1 鈴蘭
2 月見草
3 白萩
4 野菊
5 山茶花
6 水仙
7 名も無き花
8 鬱金桜
9 忘れな草
10 あやめ
12 山梔の花
13 コスモス
14 白菊
15 蘭
16 紅梅白梅
17 フリージア
18 緋桃の花
19 紅椿
20 雛芥子
21 白百合
22 桔梗
23 白芙蓉
24 福寿草
25 三色菫
26 藤
27 紫陽花
28 露草
29 ダーリヤ
30 燃ゆる花
31 釣鐘草
32 寒牡丹
33 秋海棠
ふう、疲れた…まるで漢字の読みのテストみたいだわ。とりあえず10ずつ読めば3日とちょっとで終わる計算である。なので、今日は1~10まで読んだ。
で、結論からいえば、1~7は助走というか前奏みたいなものである。少女が集まってひとつずつ花にまつわる話を語るというもの。必ずしも百合要素はない。本格的に百合が始まるのは8の鬱金桜からである。
とはいえ、7までを読み飛ばすのはいかがなものかと思うので我慢して読むこと。たしかにストーリーとしては珍しいことが書いてあるわけでもなく、美文の情景描写が続いて目が滑るが…そもそも人の話なんて内容のないものではないか。美文にしてくれているだけありがたいというものだ(私は苦手だけど)。
8からは皆さんお待たせ百合話が始まる。とはいえ、何かいやらしい話が出てくるわけではない。8の鬱金桜は7歳の子の10歳年上の寮生への、9の忘れな草は女学校の上級生への、10のあやめは雨の日に傘をくれた女性への、憧れや思慕を描写したものである。
私は寮生活をしたことないのでようわからんが、9に出てくる徒競走で好きな人が「1等」と書いてある旗を持っていたので頑張っちゃった話や、10の雨の日に綺麗な人が傘をくれた話は何か似たような実体験があるので分かる(ディテールは違うんだけど)。
そんな、誰にでも似たことがあるようなないようなエピソードが導入になっている。従って、ストーリーとして面白いところはないけど、「ああそういえば…」としみじみ自分の昔の出来事を思い出すわけである。
私は今も女性の好きな女性だからストレートの人の感覚はまた違うかもしれないけれど、似たような、年上の女性が素敵に見えたエピソードは誰にでもあるのではないか?
そう、女性は誰もが百合小説の主人公になりうるのであった! これはすごい発見である。
とまあ、とんでもない発見をさせてくれた吉屋先生に感謝しながら眠りにつくことにする。おやすみなさい。