L寄りBの本棚。

バイセクシャルだったけどだんだん男性に興味がなくなったレズビアン(L寄りB)がLGBTを題材にした小説や漫画について一丁前に語るブログ。

【お子様向け小説】『親友』川端康成

なんとあの文豪が少女小説を書いていたということを知り、Amazonでポチしたのがこの作品。川端康成、改めて調べてみたら結構色んな仕事をしてた。

 

本当は『乙女の海』を買おうと思ったのだが、Kindle本がなく今回は断念(あんまり家に本を増やしたくないんだよね)。川端康成単独の作品じゃないって言うし。作品成立の過程にはすっごく興味があるんだけど、まあ皆さんも暇なときに調べてみてください。

 

さて、読んだ感想は…「幼い」。舞台は1950年代の東京のどこか(多摩川で泳ぐから西のほう?)。中一女子2人と男子高校生2人が出てくるが、それぞれ小学校高学年女子と男子中学生くらいにすればしっくりくる感じ。特に男子高校生、哲男は母が恋しいし、郁夫は不良少年のくせにすんなり改心するし、なんか子どもっぽいんだよなあ。素直ないい子、ともいえるが。

一方のかすみは母の愛情が独占できなくてしょっちゅう拗ねるし。中一もこんなに幼くないとは思うんだけど…ひょっとしたら、川端康成がこんな感じの純なお子様だったんだろうか。そう考えると微笑ましいかも(多分違う)。

 

あと偶然が起こりすぎ。主人公2人はそっくりな上に誕生日が同じ。かっぱらいは「お姉様」のお兄さま。「お姉様」は主人公のうちの1人が引っ越した後の家に引っ越す。無駄に偶然が起きすぎて「まさか」と思ってしまうんだが、それは欠陥なのかご愛嬌なのか…文豪だもの、後者だよなあ。運命感じちゃうってやつなのかな? そういうことにしておきましょう。「女子って運命とか偶然とか好きだろ?」という文豪のご配慮ならば、ありがたく受け取っておくしかない。

 

まあ、その二点は置いておくにして、少女小説(ただし小学生向け)と考えると、うまく百合要素を詰め込んだ作品といえる。「お姉様」出てくるし、主人公2人が見た目そっくりだけど全然違う性格というのも、二人の対比が出やすく面白い。もちろんお子様向けだからいやらしい話は一切出てこないけど、女子2人の濃密な関係、出会いと別れ、お姉様、どこぞの(多分)私立学校(共学だけど)、素敵な夏休み(鵠沼のおじさんちだけど)を一緒に…ときたら、これは百合と断定して良いでしょう! 子ども百合、バンザイ!!

万一間違えてお子様が夏休みの読書感想文の題材に選んでも、タイトル通り「友情」ってことで通せば問題なし。先生もニッコリ笑ってハナマルをつけてくれるでしょう。あの川端康成の小説だからラノベ扱いにもならないし。いい事づくめだ、やったね♡